「温熱治療」とは?

慢性の膝痛を和らげる「温熱治療」とは?メカニズムや種類について

監修: 光伸メディカルクリニック院長 中村 光伸  免責事項について

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膝の痛みは非常にやっかいなものです。膝痛のせいでスムーズに動作ができない人は多いでしょう。膝痛を放置すればするほど、悪化してしまいます。

そこで、膝痛をやわらげることができる「温熱治療」について説明していきましょう。温熱治療のメカニズムや種類、注意点など詳しくご紹介します。現在、膝痛で悩んでいる人はぜひ参考にしてください。

  1. 温熱治療のメカニズム
  2. 温熱治療の種類
  3. 温熱治療の注意点
  4. まとめ

1.温熱治療のメカニズム

メカニズムについて何も知らないまま治療を受けるより、きちんと把握したほうが効率的です。膝痛を治すためにも、温熱治療のメカニズムについて知りましょう。では、これから詳しく説明していきます。

1-1.患部を温める「温熱療法」

膝痛をやわらげる治療法はさまざまです。治療法の1つになっているのが患部を温める「温熱療法」になります。痛みが出ている患部を温めることで痛みがやわらぐ仕組みです。温め方はさまざまですが、主に“入浴”が基本になります。入浴時にしっかり膝を温めてください。入浴は膝を温めるだけでなく、全身の血の巡りが活性化します。血行促進効果によって、膝にたまっている老廃物の排出が高まります。

また、温熱療法は入浴だけではありません。自分でできる温熱療法としては、“サポーター”や“膝かけ”を利用する方法もあります。できるだけ普段から膝を冷やさないように注意することが大切です。

1-2.炎症を抑える“免疫システム”の向上

膝痛を感じたとき、患部は炎症を起こしています。膝の関節・骨同士がこすれ合い、クッションの役割を果たしている軟骨がすり減っているのです。炎症による痛みは適切な処置で自然と治まります。しかし、膝痛が治まらない人は免疫システムが低下している可能性があります。そこで、温熱療法を試してみる価値があります。温熱療法は弱くなっている免疫システムに刺激を与えてくれるのです。

また、免疫システムは日ごろの食生活や生活習慣も関係しています。最近、私生活の乱れを感じている人は正しい生活に改善してください。特に、食生活は膝の軟骨形成につながる成分が吸収できます。必要な成分を食事、またはサプリメントから摂取してください。

1-3.血行促進と気の流れ

温熱療法は、血行促進と気の流れを改善する2つの効果があります。私たちの体には「ツボ」がたくさん存在しており、ツボをとおって気が流れているのです。気の流れが1か所にとどこおってしまうと病気になりやすく、膝痛も悪化します。膝痛で悩んでいる人は気の流れが悪くなっている可能性があります。そこで、温熱療法を利用すると気の流れがスムーズになります。

また、気の流れと同時に血行促進効果も生まれるのです。温熱療法によって動脈・静脈が拡張して血の流れが良くなります。

以上のメカニズムから、温熱療法は膝痛に効果的です。膝痛を少しでもやわらげるため、自分でできる温熱療法から始めてみてはいかがでしょうか。

2.温熱治療の種類

2-1.「乾熱式」と「温熱式」

温熱治療にはさまざまな種類があります。主な種類は「乾熱式」・「温熱式」・「転換熱」の3つです。自分で簡単にできる方法としては、「乾熱式」と「温熱式」の2つがあります。乾熱式と温熱式は、別名「表在熱」とも呼ばれており、表面から熱を与える方法です。「乾熱式」はホットパックやサウナ、湯たんぽを利用します。設備が整っている病院では赤外線治療や光線治療を受けることができます。

そして、「温熱式」はホットパック、蒸気浴、気泡浴、温泉療法が主になります。医療施設ではやわらかい石を利用した“パラフィン浴”で治療できる施設もあります。以上のように、温熱療法にもさまざまな種類があることを覚えておいてくださいね。

2-2.専用の治療器を使う「転換熱」

温熱療法の種類には「乾熱式」と「温熱式」以外にもう1つあります。専用の治療器を利用した「転換熱」です。転換熱は、別名「深部熱(ジアテルミー)」とも呼ばれています。表面から熱を浸透するやり方とは異なるので要注意です。転換熱は痛みのある患部、深いところまで温めることができます。温熱効果を深部まで与えるのなら、転換熱での温熱療法が最も効果的です。

転換熱として使用する治療器は、主に極超短波・超短波治療器(マイクロ波治療器)・超音波治療器が主流です。膝痛の治療をしている病院やクリニックには専用の治療器がそろっています。自宅ではなかなかできない治療でも、専用の医療施設であれば可能です。膝痛で悩んでいる人の中には、自宅で温熱療法をしながら病院・クリニックに通院している人もいます。

3.温熱治療の注意点

3-1.状態や疾患によっては危険な場合も

患部を温める温熱療法には、場合によって危険をおよぼす可能性があります。特に、非代償性心不全をわずらっている人は注意しなければなりません。全身循環障害や出血しているとき、意識障害をともなっている患者も温熱治療は不向きです。
膝痛だけでなく、疾患にも悪影響をおよぼします。

また、体内にペースメーカーなどの機器をいれている人は極超短波を使用した転換熱が使用できません。以上のように、温熱治療は状態や疾患によって危険になる恐れがあります。後悔しないためにも自分の状態をきちんと確認したうえで治療していきましょう。

3-2.患部が熱をもっている場合はNG

温熱療法はすべての膝痛に効果があるとは限りません。膝が腫れあがっている、痛みがひどい場合は温めると逆効果になる可能性があります。膝痛が出てきた場合、「冷やす」かまたは「温める」方法どちらかになるのです。もし、温熱療法をしても痛みが治まらない場合は冷やしてください。基本的に、炎症初期の強い痛みが出ているときは冷やしたほうが良いと言われています。

また、患部が熱をもっている場合も温熱療法は注意が必要です。熱をもっているのにもかかわらず温めてしまえば痛みが悪化する可能性が高くなります。熱をもっている場合はすぐに冷やしてください。そして、自宅で患部を温めるとき、その設定温度に注意が必要です。熱くなりすぎると膝痛がひどくなるケースがあります。

熱くならないよう、ちょうど良い温度に設定してくださいね。膝痛が悪化しないためにも、正しい温熱療法のやり方や注意点をしっかり把握しておきましょう。効率的に治療するには、正しい知識が大切です。

4.まとめ

温熱療法のメカニズムや種類、注意点について説明しましたが、いかがでしたか? 膝痛でも、重く鈍い痛みが続いている人は温熱治療が効果的です。痛みが慢性になっている人ほど効果は抜群でしょう。しかし、体質や状態、もっている疾患によっては逆効果になるので注意してください。もし、温熱治療で痛みを感じたときはすぐにやめましょう。患部を温めて痛みが出た場合は治療法が合っていない証拠です。逆に、冷やしたほうが痛みがやわらぐケースもあります。よって、自分の状態や痛み具合を把握しつつ、温熱治療をすることが大切です。

また、温熱療法は自宅でもできます。入浴や湯たんぽ、膝かけなど利用して冷やさないようにしていきましょう。

光伸メディカルクリニック院長中村 光伸

監修者

中村 光伸
光伸メディカルクリニック(東京 新宿)院長
医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科認定スポーツ医
日本整形外科認定リウマチ医
日本体育協会公認スポーツドクター
日本抗加齢学会認定専門医
日本胎盤臨床医学会認定専門医
日本美容皮膚科学会
日本レーザー治療学会

東京生まれ。北里大学医学部卒業、北里大学整形外科入局。
学位習得後、フンボルト大学外傷再建外科学(ドイツ)・チャンガン大学形成外科美容外科(台湾)へ留学。 Jリーグヴァンフォーレ甲府チームドクター、山梨学院大学陸上競技部(駅伝)チームドクターを歴任。 北里大学整形外科専任講師、北里大学救命救急整形外科部長、松倉クリニック&メディカルスパ等を経て、2011年12月、自身の理想とする医療を実現するため「光伸メディカルクリニック」を開業。 “リバースエイジング・健康寿命を延ばす”を命題に“見た目”の大切さと“動き目”の大切さを唱え、「整形外科」「美容外科」「美容皮膚科」「リハビリテーション科」を一つの科として診療している。

著書
「3か月で10歳若返る わたしはリバースエイジングドクター」(H304月1日発刊予定) メディア掲載歴
『Domani』2018年3月号、『VoCE』2017年11月号、『厳選 クリニックガイド』、『VOGUE』2017年9月号、『VoCE』2017年4月号、『VoCE』2017年3月号、『ViVi』2016年8月号、『VoCE』2016年6月号、『InRed』2016年6月号、『VOGUE』2016年1月号、『DRESS』2016年2月号、『MAQUIA』2016年2月号、『VoCE』2015年2月号、『VOGUE』2015年1月号、『MyAge』2015年秋冬号、他多数